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2023.05.03

うねとしゆき様~想像と創造で人を支えて~

地域包括支援センターの主任介護支援専門員であり、切り絵作家としても活躍されている宇根様。

しなやかだけど力強いパワーの原点について、お聞きしました。

宇根利幸
u:宇根利幸
m:森田由三子

うねとしゆき様 ~想像と創造で人を支えて~

切り絵作家・主任介護支援専門員

◇自己紹介◇

三木市在住。高校まで兵庫県三木市で過ごし、大阪芸大卒。

その後、劇団四季の衣装部で「キャッツ」や「オペラ座の怪人」などの衣装制作に携わる。阪神淡路の震災を機に地元へ戻り、福祉住環境コーディネーターから介護現場へと方向転換。現在は三木市中央地域包括支援センターの主任介護支援専門員として勤務。切り絵作家としても活躍中で、今回のふたり展は実のお母さまのパッチワーク作品とのコラボ開催で、三木市役所のみっきいホールにて開催。

◇自分の傾向を知る~色との出会い◇

切り絵というのは黒い画用紙を切り抜いて、白黒の世界がポピュラーなんですが、

私は切った裏からと折り紙やら、和紙を入れて、色をつけるちょっと独自な方法で楽しみながら切り絵をしています。

学生の頃は、ロココやヌーボーから民族柄(パティやエジプト文様など)から色に対して勉強してきました。

作品を作り出すようになってから、色に対する思いが深まりました。

芸大を受けるにあたって、美術の専門学校に元町へ通ってたんですけど、そこでデッサンと か、色彩の勉強するにあたって、マス目に全部違う色を画洋紙いっぱいに作りなさいっていう課題があったときに、なかなか色が作れなかったんですよ。

本当は無限に色っていうのは、組み合わせて色が作れるんですけど、

実際自分が作る色っていうのはす。やっぱり偏ってた。

好きな色とか、それ以外の色を作ろうと思ったら、なかなかやっぱり努力がいる。

無限大に広がる色があるのに、自分はなんでこんなに偏った色しか使えないのか、難しさも知りました。

客観的に自分のその傾向を知るっていうことは、なかなか難しい。

色遣い1つとっても、その傾向というのが出てるっていうのには、ちょっと驚きもありましたし、もっといろんな色を使いたいという気持ちにもなった。

◇「色」には善悪も、きれい・汚いもない◇

色にはいろいろな組み合わせとかはあるんですけど、その色自体には、綺麗な色とか、汚い色っていう概念はないって教えてもらったんですよ。どれ1つとってもうんけど、あの人がこれは汚い色とか綺麗な色っていうレッテルだけ。レッテルを張ることによって、それがなんか染みついている。

本来は、その色には別に善悪もなければ綺麗・汚いっていうのもないということは、やっぱり勉強していくにつれて、気付いていきました。

m:色の好みはあるけれども、綺麗も汚いもない、ただ存在しているっていうことですね。

◇劇団四季の衣装部へ◇

劇団四季の衣装部っていうと、キャッツの衣装作りから。真っ白の総身タイツに、ずん胴っていうおっきな鍋やつに、色粉で色をつけたやつを一つ一つ染めていく。

腹だけ白く抜くような染型に染めていって、それからマネキンのボディに着せて、あの毛並みを全部マジックで書くんですよ。

そういう作業自体もとても楽しかったし、また、舞台上でその衣装がどう映えて、というのもすごく面白い 。オペラ座の怪人とか、ああいう豪華な衣装もあるんですけど、例えば、ストレートプレイで戦争物とか扱った時には、その衣装を汚す汚しをかけるっていう作業もかなり大変。普通の綺麗な服をどんどん汚していくという作業も、衣装作りにはすごい大切で、それも結構楽しくというか、面白い仕事でした。

劇団四季って結構一流な劇団であったので、気が抜けないというか、やっぱりいいものをつくる。皆さんがいいものを作りたいっていう気持ちがある劇団だったので、それもすごく刺激にはなったと思う。

◇衣装制作から介護の仕事へ◇

m:そんなお仕事から、どんなきっかけで介護の仕事に変わられたのですか。

u: 劇団四季をやめてから、衣装を作るということを突き詰めたくて、大阪の専門学校に行き直したんですよ。そこで、基本的な立体裁断とか学んで、舞台やオペラ、バレエの衣装を作っていたんです。そして、その時に阪神淡路大震災があって。大阪にいたんですけど、両親がリフォームの仕事を自営でし始めたとこだったんですね。2人でやってたけど神戸の町が大変で、水もでない、お風呂にも入れない。リフォームも、水道関係のリフォームだったので、これは生活にすごい大切なことであるということで、帰ってこないか、と。

それで、実家に帰ってリフォーム業を手伝ってたんです。

阪神淡路大震災が落ち着いた頃に、福祉受環境コーディネーター、当時できた資格だったんですけど、手すりをつけたり、スローブつけたり、やっぱりその障害のある方に必要な方のための資格を取った。そこで初めて、あの車椅子の方がこんなことで困って たり、あの足の悪い方にこんなこところに手すりがあったら、すごく便利、ていうことをした。

これが福祉との1番の出会いです。

それから仕事を続けながら、心理学とかも色々ちょっと学んだんですけど、そこで看護師さんとか、介護職の方に結構たくさん出会って、やはり大変だけど、とてもやりがいのある仕事と聞いていました。それで協同学苑のヘルパー2級を受けて、たまたま実習先が三木市内の特別養護老人ホーム。そこで初めて、すごい、こういう世界なんだなっていうのを体験した。 その当時課長だった方が、私を誘ってくださって。

当時は40手前で全く経験がない。そんな素人を雇ってもらえるのかなっていう不安もありました。ぜひって言われて面談も受けたんですけど、

やっぱり施設長さんは難色を示されました。40手前で経験もないし、全然違う世界で働いてきているのに果たして続くのかっていうような感じだったんです。

最初はパートみたいな形で入って、続けば正社員にしましょうという条件で入った。

やはり入ったら入ったで、全く知らない世界。大変なことはもちろん大変っていうのはあるんですけど、でも、その反面楽しさもあった。

毎日顔合わせる入居者の方とか、デイサービスの方とか。元気に挨拶交わしてくださるし、ちょっと弱ってた方が ちょっとした支援によって元気になったりする。

特別養護老人ホームで、いかにその方々が楽しく、穏やかに暮らせるか。

私たちのような職員の関わり方次第っていうのをすごく感じました。

多分、自分が成長してるというか、なんか変わってきているという実感も多分あったんだと思うんですよ。

その人と接するということで、なんか、気づかされることとかっていうのがあった。

◇人とかかわることへシフト、そして切り絵◇

m:それまでは、アートとか芸術というところからようなところから、人に関わっていくっていうところにシフトされたいうことですね。

u:そうですね。最初に入った特別養護老人ホームで、入居者の方の誕生日のお祝いというがあって、毎月誕生月の方をお祝いする。食堂の壁に、誰々さん何歳です何月、何日何歳ですおめでとうっていうようなお祝い。その、壁面構成を私が引き継いで、そこで、ちょっとその切り絵とか、アートではないですけど、そのものが楽しくやり始めた。

m:それが始まりで今に至るのですね。先ほど言われていた「立体裁断」は、ここで展示されている立体的な作品ですね。

u:はい、立体裁断のパターンメーキングって、基本的なパターンを起こして、本当に人が来ているような形になるんですよ。

◇切り絵作家と主任介護支援専門員として◇

m:そういう作品を作りつつ、地域包括支援センターっていう現場で、お仕事をされてるんですが、よくその両立ができるなと思うんですけど、何か秘訣とかがあるんですか。

u:市役所で働いているので,仕事は土曜日、日曜日はありませんし,定時で帰る形を取っているので、オンオフの切り替えは、すごいつけやすいですね。

でも、家に帰って毎日切り絵してるかって言ったらそうでもなくて、やっぱりしんどいときはしなかったり。

◇創造・製作に没頭するアーティスト◇

u:仕事をしているといろんなことがあるけれど、切り絵をしているとリセットしている気持ちになれるというか。切り絵をしだすと色々なことが、ぷっつり切れる。

没頭できる時間になっていて、それがすごくリセットにつながっているんだろうなって思います。作品を作っている時は、仕事のことは全く考えていないですね。

仕事のことじゃなくて、その出来上がりのことを想像しながら作っているんですよ。ここ切ってこう色を入れたらどうなるかな?っていうようなことに集中するので、やっぱり仕事のことはもう本当に全然考えてないです。

m:ソーシャルワークをする主任介護支援専門員としての一面と、そして、切り絵される時は、アーティストとしての時間。その2つがあるから、今できるということですか。

◇楽しく生活するための想像力◇

u:そうですね。おそらく人付き合いとか、仕事でもそうなんですけど1人ではできない仕事ではあるんですけど、それって、あの物づくりと一緒で、やっぱり想像力というか、うん、そういうものが仕事の中に活かせればしんどくないかなっていう気は特にするんですよ。

もうこの先どうなるんだろうって思い出すと作品作りでも行き詰まるし、仕事でも多分行き詰まると思うんです。

そのビジョンというか、この作品はこういう風に作りたいなとか、こういう風にしていきたいなっていうのがあるから、うん、やっぱりそれに向かって手が動いてるんです。

仕事でも多分そうなんじゃないかなっていうところがあって、おそらく支援させていただいてる方がこういう風になったら、多分楽しく生活ができるんじゃないかなとか、ああいう風にしたら、もしくはちょっと生きやすくなるんじゃないかなっていう想像力っていうのは、やっぱり必要なのかなっていう気がしてるんですね。

◇イマジネーションとその人らしさ◇

m:宇根さんにはイマジネーションとしての想像と、それから、クリエイティブとしての創造、 2つを使い分けるというか、両方使っておられるような感じですね。

u:そうですね。仕事の方ははいま想像の域を超えないことももちろんあるんです。自分の意見、意思とか。そのサービスによってその方が幸せになるかならないかっていうのも、もちろん違ってはくるんですけど、でも支える側が明るいビジョンというか、こうなったらいいよねとか、ああなったら、多分すごく楽しく生活ができるんじゃないかなっていうイメージがないと、おそらく行き詰まってくると思う。

この先のイマジネーション・イメージは、持ってもいいと思っていて、それもあのポジティブなイメージは逆に持つべきなんかなっていう気がしてます。

だから、利用者の方とかとお話にする時に、困っていることもありますけど、楽しいこととかやっていたことっていうことにすごく興味がある。

昔、こんなことやっててねっていうことにはすごい共感できるんです。で、どうして今しないんですかって言うと、やっぱりちょっと 目が悪くなったからねとか、あと、手先がちょっと悪くなったからねっておっしゃるんですけど、じゃあ、 手先が必要ないことなんか、なんか作り出すっていうことも、おそらくできるんじゃないかなと思うと、話が弾む。

その人らしさが見えてくる、その方が輝いていたとこ時のこととか見えて、とてもこちらが楽しくなる、嬉しくなるっていうような感じなんですよね。

m:そういうことを聞かれる利用者さんは、本当に幸せでしょうね。

u:びっくりされる方もいます。もちろんね、なんでこんなことを聞くのって思われてることもあると思うんですよ。家にはその方がおそらく作ったものだろうなって思うのが 飾ってある。物っていうのは、その時多分一生懸命作られたとか、何かあの手伝ってもらって作ったとかで思い入れがあるものだからこそ、やっぱり飾ってあるものが多くて、それを見つけみると、やっぱり聞きたくなるんですよ。これはどこで作ったんですか、どう作られたんですかって。

知りたい。そしたら、やっぱりその方もお話してくださる。これはねっていう風に喋ってくださると、その時間はすごく豊かになるんですよね。

m:お話を伺うことで、そして、話すことで、利用者さんも心が豊かになる、思い起こせるっていう時間が持てるうことですね。素晴らしいですね。

◇これからの夢、ホスピタルアート◇

u:高齢になってくると、やっぱり制限が出てきたりとか。加齢によって今までできていたことができなくなってくるのは、 まあ、当然と言えば当然なことかもしれないですけど。そしたら、できることを新たに始めてもいいし、できるように工夫をしてもいい。

物作りって、とても「心にいい 」ことではないかなと思っているんです。

人とお話するってことも、もちろん大切ですけど、ちょっと物を作るっていうことは

素敵なことであるので。ホスピタルアートっていうのも、とても好きなことであるんです。物を作ることによって人って癒されるところってすごくあるなっていうのが あってて、

自分が物作りをずっとしてるのは、作ることによって、自分自身が癒されてるんかなっていう気もするんです。

m:今言われた「ホスピタルアート」は癒しのアートですか。

u:そうですね、病院とかで、四国にある子供病院なんですけど、子供さんが病院行くのはやっぱり怖かったり、治療を受けるのが嫌だったり とかする気持ちっていうのは、あるんですね。けど、その病院でそのホスピタルアートって、 とても楽しい飾りだとか、仕掛けだとか、プレゼントだとかがあることによって、子供たちが嫌だった病院が好きになる。

病院が、行って楽しいっていうところから治療が始まると、おそらく相乗効果で、いろんな意味で良くなっていくような気がしていて、それも実証されているとかいうこともあるんですけど、人って癒されるというのが大切。

美味しいもの食べたら元気になるとか、綺麗な景色が見たら、元気になるとかっていうのはあるんですけど、ちっちゃい子供って、そんな美味しいもの食べたら元気になる綺麗なものを見たら、元気になるっていう以前に、

なんか心地よさ か可愛らしさとか楽しさっていう。その本当の気持ちは、その書き立てられるようなものからの癒し。元気をもらうっていうのがあって、それは多分子供だけではなくて、大人の人でも高齢の方でも、おそらく一緒なのではないかなっていう気がしています。

m:素晴らしいですね、確かに、心が癒されていくような、そんな作品が近くにある、そんな環境で自分がいられるっていうことで、また しんどいと思ってる部分とか、辛いって思ってる部分がちょっと軽くなる。

u:そうです、そんな時ありますよね。

◇メッセージ◇

m:最期に、ケアマネジャーや現場で疲れている人に向けて、送るエールはありますでしょうか。

u:特にケアマネジャーしていると,利用者の方に趣味を持ちましょうとか、なんか楽しいことを持ちましょうっていうことを多いと思うんですけど。

おそらく自分自身が、何か楽しめること。素敵だなと思えることがないおそらく相手に響かない

私はこんなことでしてて、こんなことで楽しいんですよって言ったら、おそらく利用者の方が興味を持って聞いてくださる。ああ、 この人はこんな人なんだなって、その人への興味を持ってくださるということが、自分と相手との距離を縮める。ちょっと自分が楽になる。ケアマネジャーだけの枠に囚われない。私は1人の人間なんですよっていうことが言えるうんのではないかなと思うんですよね。

ケアマネジャーだから、こうしないといけない、ケアマネジャーだから、こうこうあるべきっていうのはしんどいことだと思うます。自分ってどんな人間でどんなことが楽しくてっていうことがわかっている人って、やっぱり強いのかなっていう気はしてます。自分が強くなるというか、自分というものが見えるというか、対人援助に疲れた時とか、しんどいとかも、もちろんあるんですけど、それを支えるものにはなりうるかな。

m:自分自身を使う仕事だからこそ、自分を豊かに、そして自分を輝かせていくっていうことが必要ってことですね、 今日は本当にありがとうございました。