芦屋市社会福祉協議会の針山大輔様にお話を伺いました。
〇 芦屋市社会福祉協議会、地域福祉係 主査、社会福祉士の針山大輔さんです。
H: 針山大輔です。昭和47年生まれ、山羊座のA型です。(笑)
◆ 今の仕事の始まり ◆
〇 針山さんは兵庫県介護支援専門員協会の講師や、指導者養成2期生の担任など、指導的立場におられますが
福祉の仕事をすることになったきっかけは何なのでしょうか。
H:元々ミュージシャン志望でした。ギター、ベース、ドラム、ピアノ一通りできます。
音楽やり始めて、すぐ、これで食べていけないってわかった。でも、音楽って、人と通じる感とか、相手に伝えられるってことに
ロマンを感じてた。音楽の、たとえばソウルミュージックとか、アドリブでやるコールアンドレスポンスとかにひかれたわけですよ。伝わる熱量に憧れがありました。
結局人間に興味があるんやと思ったわけです。教育学部とかも考えたけど、結局福祉にいきました。
H:大学では本当に勉強せずに、音楽ばっかりしてた。一応卒業はしましたけど(笑)、卒業の年が、阪神淡路大震災で。
想像つくと思いますけど。就職活動もせず。大学からもボランティアに行ったりしてて、僕もボランティアなんて一切やったことなかったけど、ボランティアぐらいしょうかと思って行ってた。
大学の先生にお前みたいなふざけたやつはちゃんと働けって言われて、1つは病院のMSWで、もう一つは老人ホーム。MSWのほうが名前がかっこいいからこっちってお願いしたけど
結局、女の人を募集しているといわれて、老人ホームの就職したのが一番最初です。
震災の年のあの春やから、もう街の中ははっきり言って、なんにもない状態でした。
H:初めて勤めた老人ホームは、まだ介護保険制度も全然ない時代の養護老人ホームです。 楽しかったですけど、文句ばっかり言うわけですよ。
こんな計画意味がないとか、もっと個別にやらんなあかんとか。そしたら、お前ちょっと勉強してきたからって偉そうなこと言いやがってって、先輩とかに言われた。て
尖ってたわけです。
H:なんか働けって言われたから働いてただけで、何のビジョンもなかった。最初の職場は2年半でやめた。実家の近くに新しい老人ホームができて、音楽も続けていたので
実家の近くのほうが音楽やりやすいと思って、バンド仲間と一緒にそこに就職しました。
◆ 転機 ◆
〇 今はケアマネジャーの指導、主任ケアマネの指導をされる立場になられているわけですが、そこまでの間に、いったい何があったんでしょうか。
H:平成9年の10月に就職して、その年の12月ぐらいに渡部律子先生の研修を受けました。
〇 すごくラッキーでしたね。
H:はい。で、(研修受けて)ああ、これ俺まずいぞって。大学時代、本当に勉強していなかったので。研修うけて、これ、あかんわって思った。
こんなんしとったら、これはあかんわって思った。明石の在宅介護支援センター主催の研修やったと思います。
H:でまあ、環境恵まれて、すっごい勉強する機会があった。恵まれてましたね。
介護保険始まる時は、実務経験5年ないんで、ケアマネになれなかったんですよ。
3回目の試験が僕がちょうど受けれる時やったので、試験受けるのには結構勉強しました。社会福祉士も包括に就職するときに取りました。
H:芦屋に来たのは平成17年の4月、基幹型の在宅介護支援センターでソーシャルワーカーをしてました。で、包括が立ち上がる時にそちらへ移った。
〇 ずっと地域包括支援センターでしたね。
H:そう、ずっとそうやったんですが、福祉公社が社協と統合することになって、社協職員になった。社協職員としてはビギナーです。(笑)
◆ 地域に根差して活動する ◆
〇 今日見せていただいた「あしや街なか手芸部」、地域活動のお仕事ですが、すごく楽しそうでしたね。
H:楽しいです。去年4月に、異動になりまして。重層的支援体制整備事業、担当主査なんです。
〇 重層的支援体制整備事業とは、どんなものなのですか。
H:地域共生社会実現。それを推し進める事業なので、やってることは包括的支援体制と基本は同じでしょうか。ただ生活困窮からの制度の流れがあるのでもっと幅広い。
制度の狭間にある人の支援とかって言うけど、あらゆる世代の人がうん。 地域社会に参加して、社会的孤立をなくしていく。
H:やりたいことは、妄想ですけど(笑)たくさんあります。
高齢者ていう枠を取っ払って、地域の人のあらゆる居場所とか。役割作り。
いまやりたいのは、「一芸披露会」。
いろんなボランティアさんがいるけど、活動する場所がない。
ちょっと手品してほしいとか、ちょっと歌うたってくれたらみたいな人一芸披露会をやって、そこに
スカウトキャラバンみたいに、運営者が並んでて、あ、その人欲しいです、うち来てくださいみたいな感じ。来年の活動計画にあげました。
H:マッチングですね。で、運営者さんと話して決めてもらうけど、あぶれた人はみんなで相談して、「やりたいもん祭り」
「やりたいもんカフェ」でやりたいもん同士で話してもらう。
ここでケミストリーが起こると思うですよ。こっちからこんなことして、ではなくて、あんたと私で一回こんなことやってみようみたいな。
◆ 福祉っぽくしたくない ◆
H:福祉っぽくしたくないんです。なんか嫌がられる。
まちおこしに近いようなことでも、福祉からかけ離れてることの方がいいと思う。今日もちょっと出てましたけど、マルシェやるけど、その中に、ちょっと障害ある人が関わってるとか、高齢者の居場所になってるとか。
福祉からスタートしてまちづくりっていうと、無理があるなと思う。街作りから始まって、実はちょっと福祉も絡んでるみたいな。
H:入口が福祉じゃない方が、一般の人の関心が高いところから行った方がええなっていうのは、この半年ぐらいでようわかりました。
今までは見誤ってた。
居場所のない人のために居場所作ってあげましょうみたいな話をするじゃないですか、社会資源作ろうみたいな。それは大きなお世話やと思った。
普通っていう言葉よくないですけど、誰もが当たり前のように言ってる場所の方が、実は多くの人の居心地がいいのに、そこを無理やり福祉っぽくする必要とかないなと思う。
なんか普通の喫茶店やのに、実は認知症の人のたまり場になってるみたいな。当たり前の生活。
ノーマライゼーションとか言ってんの、福祉の人だけで、別に、地域よう見たら当たり前になってるところも結構あるのに。それを無理からもうちょっといいもんにしたろか、みたいな、変な力がかかってるところがあるんちゃうかなと。
H:生活支援コーディネーターが事業所を周ってたんですよ。ある喫茶店があって、そこに認知症の人が週5日通ってる。
家族に普通のバスに乗せられて、その バス降りたら、すぐ喫茶店なんでそこに行ってランチ食べる。で、 ママさんが忙しいからって言って、ママさんが飼ってる犬をうん、ランチ食べた後、犬の散歩に行かはる。
別のお客さんが、あの人、ちょっと認知症あって心配やから、私も一緒に行くわって、他の常連さんが一緒についてあげる。で、夕方になって、またそろそろ帰る時間やでって言って、うんママさんが。また帰りのバス乗せてあげてる。
もうほぼデイサービスです。商店街のハロウィンイベントでは、その常連の認知症のおばあちゃんは、子供におやつをあげるや役なんですよ。デイサービスみたいな状態。で、おまけに高齢者のピークの時間過ぎると、隣に作業所があって、そこの人たちが
終わってからみんなたまりに来る。そんなものが普通にある。
H:ケアマネがケアプランの中に位置づけていいっていう話じゃなく。そんなとこ、見過ごしてないかって思う。
僕が担当してた認知症の人も、訪問行って、すっぽかされたら、うん、あそこやろなって思うとこ行く。
民家の軒下に座ってるんですけど、なんでここに座ってんのって聞いたら、うん、いや、ここは小学生の通学路なんやって。 時間も決まってて。なんで時間決まってんのかと思ったら、子供は通るんですよ。自分の飼ってる犬も連れて行く。犬の散歩で行くので。
小学生はその犬知っとるから、わあ、なんとかちゃんとかいう
H:みんな知って分かってて、高齢者、自分は通学の見守りしてるっていう、役割りやね。
で、小学生は一応、おばあちゃん大丈夫かっていうのと、犬可愛いっていう。だから、もうどっちが誰の社会資源か、みたいな話は結構いっぱいあるのに。
そんな風に見てなかったなっていうのは、今更ながら 気づいた感じです。
H:ある日突然ね、普通のおばあちゃんやったのに、下手したらご利用者様言われてね。お節介な、なんとかサービスまで引っつけられて。この人実は、サービス来てない日は、他の人の家行ってご飯あげてるでみたいなこと、結構あるんです。
そんなところはちょっと見過ごしてんちゃうかなっていうのは、思いますね。
◆ つたえたいこと ◆
H:研修とかで、ストレングスモデルとかという立派な言い方あるけど、そんな大そうな話じゃなくて、どう暮らしてるかをもうちょっと見た方がええんちゃうかなっていう気はしますね。
この人の強みがどうとか、エンパワネントがどうとか、そんな難しいこと言わんと、もうちょっと知っとこ、みたいな。
〇 そのままのその人のことをちゃんと見るっていうことですか。
H:こっちも支援するモードで行くからでしょうね。
この人にはこの力があるみたいな、逆にものすごく、バランス悪い見方をしてる。
H:ちゃんと見て、ちゃんと聞く
生活者としての主体性が失われていっているというか。
バランスを崩したきっかけは、ケアマネジャーや、公的なサービスかもしれないみたいな。極端ですけど。
介護保険サービスが始まった途端に離れてしまう地域の人とか。
H:どこでどうやってご飯食べてんのとかね、確かに細かいですんですが、そんな話とかの積み重ねやと思います。
もっと当たり前の生活とか、 普通の暮らしっていうものをちゃんと見ていかなあかんって。
H:お忙しいのようわかってるんですけど、面白がってほしい。
その人の個性みたいなものを、 へえ、なるほど、おもしろっていう感じが毎日あるはずなんですけど、こっちの尺度で、めんどくさいとか、言うこと聞いてくれへんに
なっちゃってるんやったとしたら、ちょっとそれは違うかなという気はします。
もっと面白がってほしい。
〇 ありがとうございました。